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見た映画とか円盤とか、読んだ本とか、聞いた音楽とか。備忘録代わり。

Feb 2, 2016

 

マグノリア [DVD]

マグノリア [DVD]

 

インヒアレント・ヴァイス、ゼア・ウィル・ビー・ブラッドブギーナイツときて、4本目のP.T.アンダーソンである。

9人の男女の斜陽時を切り取ってコラージュした群青劇で、その視点の多さに比例して186分と長丁場なのだが、重苦しく起伏のない展開が続くので体感としてそれ以上に感じる。劇中の台詞を借りるのならば「クソみたいに長い」。
少し前に時間も忘れて趣味や何かに没頭すると老けない、という趣旨のツイートを見かけたが、それが本当だとすると、余計に年を食ってしまったことになるだろう。

広げた風呂敷を放り投げて終わるのはインヒアレント・ヴァイスも同じだが、あちらはキャラクターの妙があって、「よく分かんないけど当面殺されてる心配もなさそうだし彼女も戻ってきたしドントウォーリービーハッピー」なんて親指たてても許される空気があった。
翻ってマグノリアの登場人物たちはというと、主要人物のほとんどは何かしらの罪を犯し、救いを求めて足掻いていて、しかも最後まで誰も報われない。意味ありげに登場した挿話も何やかやの間に立ち消えてしまい、画面のこちら側は終始置いてけぼりだ。エンタメを期待して見ただけに、苦痛は倍だった。(おまけに字幕は戸田さん)
そんな、どう収拾付けるんだコレという疑心や、停止ボタンに伸びかける手を叱咤する葛藤や、眠気が最高潮に達する瞬間――150分を超えた先――おそらく見た人の99.9%が度肝を抜かれたであろう一大クライマックスが訪れる、のだが、正直、監督が好きだとか、出演者の作品を浚ってるとか、暇で暇で死にそうな人以外は動画サイトでそこだけ切り取ったビデオを見れば十分だと思う。退屈極まる2時間半を我慢するだけの価値があるようなものでもないから。
ただワタクシ的に、例のモーセ的ハプニングのおかげで駄作とは言え凡作ではない1本を作りあげてしまったP.T.アンダーソンに畏敬の念を禁じ得ない訳で、とりあえず残りの作品も見たいという欲は継続している次第。

トム・クルーズが(自分が見たものの中では珍しく)泣ける演技をしていて、その点では見た甲斐があったと言えるかもしれない。一つ前に見たのがコラテラルだったからという可能性もなきにしもあらずだが。