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見た映画とか円盤とか、読んだ本とか、聞いた音楽とか。備忘録代わり。

Feb 4, 2016

ジンジャーとフレッド [DVD]

ジンジャーとフレッド [DVD]

サーカスのような喧騒(繁盛しているという意味合いではなく、興行的には振るわないものの内輪は盛り上がっている、ベルリン天使の詩でマリオンが所属していた一団のような寒々しいかしましさ)の中、30年ぶりに再会する元ものまね芸人の男女。公私両面のパートナーであり一世も風靡した2人だが、すっかり老け込み、また別れてから歩んだ互いの人生の差異に阻まれ、ぎこちなくしか触れあえない。時間が必要なことは火を見るより明らかなのに、テレビ局という、よりにもよってな場所がそれを許さないーー。

DVDのメニュー画面が全盛期の二人の写真をバックにしていたので、再会→過去がフラッシュバック→狂騒の時代終えて今みたいな展開かなと予想していたのだが、待てど暮らせど出てくるのは老いた2人だけだ。解散から30年も経っているのにTV局から声を掛けられたという事実、華々しい経歴、かつての友人からの手放しの称賛。それらは台詞に語られるのみで、現実に映るのはたどたどしいステップと、情けなく息切れする男の丸まった背中と、タップに対する大衆の無関心といった、残酷なものばかり。見ていて切なくなる瞬間も幾つかあった。

とは言えこれは悲劇ではなく、風刺のスパイスで味つけられた喜劇なので、色々とありつつ最後は収まるべき場所へと収まってゆく。お金の貸し借りをすることで、もしかしたらまた近い内に再会できるのかも、なんて希望を膨らませるラストシーンの何とも言えない色味に、これが彼が巨匠足り得てる理由なんだろうなあと妙な納得をしてしまったり。
その上で、実は2人が出演したのは66あるチャンネルの中の一つでしたよーってチクリと皮肉って終わるのが大変ワタクシ好みで良かった。


ミーン・ストリートからこちら転落劇ものが続いているけど、結局フィクションの旨みは良くも悪くも悲劇にあるということなんだろうか。
そろそろ頭空っぽで見れるエンタメも見たいかなあ。