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Daily

見た映画とか円盤とか、読んだ本とか、聞いた音楽とか。備忘録代わり。

Feb 23, 2016

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SAUL FIA 107min

監督はタル・ベーラに師事していた、という枕詞に惹かれて観に行ったものの、どちらかと言えばアレクセイ・ゲルマンが提示してみせた混沌を混沌として映像化する手法に近いものがあって(野放図に混線する誰彼の声、言葉でも絵でも説明が為されないまま進むストーリー、そして結局は明かされない意味深な台詞たち、把握しずらい画面、人の尊厳?何それ美味しいの?状態など)、つまりは地獄のような107分だった。
そもそもホロコーストで実際に行われていたこと自体があらゆるフィクションを上回るので、正しいと言えば正しい表現、なのかもしれないけど。

「神々のたそがれ」のパンフレットで沼野氏が、"この映画を観ることは、人生にとって大きな事件であり、体験でもある"と表現していたが、まさに「サウルの息子」もその類の、恐怖や狂気といった負のパワーを容赦なく叩きつけ、強制的に追体験させてくれる映画だ。さらに性質が悪いのは、風刺の要素も入れ多少は笑いどころのあったアレクセイ・ゲルマンと違い、極限までそぎ落とされたシンプルな映像が思考の逃げを許さず、目を閉じ耳を塞いで鑑賞を放棄しない限り、喉にかかった圧力が緩むことがない。
理解力がない、集中力が続かない、精神的打撃への耐性が薄い、の三拍子が揃っていながらこういった地獄に進んで炙られたがり、その後味が大好物という悪癖を持つ私にとって一度目は映画館=逃げられない状況でというのは必須だったわけだけど、本気で途中退出しようと思ったのは本作が初めてで。ただ昨今の情勢を鑑みると、例え平和という幻想を(かろうじて)抱けている日本人であっても見ないという選択肢もないと思う。怪作。

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