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見た映画とか円盤とか、読んだ本とか、聞いた音楽とか。備忘録代わり。

Feb 28, 2016

 

ザ・マスター [DVD]

ザ・マスター [DVD]

 

PTAらしい鮮やかで刺激的で美しい映像と、ほの暗いライティングが醸し出す緊迫感と、主演3人の怪演が奇跡的なバランスで絡み合って織りなす、重厚な人間ドラマ。

それらしい"ニセモノ"とそれを信じて集まる"ヒトビト"、という図式は、例えば最近では水素水がそうだし、映画や小説の中でも繰り返しテーマとして用いられてるけど、悲しいかな、分かっていながら分からないふりで騙されていたいのが凡人の性なんである。白血病に侵され余命はわずかと宣告されたところに、「白血病になるまえの時間に戻れば治せる」等と言われれば、それがどんなに馬鹿げた言い分だと分かっていても、藁にも縋る思いで信じてしまうんだろう。多分。
問題は、とんでも発言でヒトビトを洗脳し扇動するニセモノ、"マスター"が私利私欲や名誉のためだけではなく、多少の善意を持ってそれをやっている、ということだ。つまり彼は完全な悪ではなく、マスターの発言や行動が一本筋でないと気付いたフレディも、その点を慮ってかぐずぐずと教団に残り続ける。一度信じて懐に入れたものを誤りだと認めることや、糾弾することの難しさは痛いほどによく分かるが、それだからこそ、フレディがマスターの支配をついに振り切り、バイクで砂漠を走り抜けるシーンの鮮烈さは重い衝撃を伴って焼きついた。

「人は何かマスターという存在なしに生きられるか?もしその方法があるなら教えて欲しい。我々誰もがこの世をマスターなしで彷徨えるとは思えないから。」

ホアキン・フェニックスその人にも言えることだけど、天才と狂人は何とやら、というやつ、